三月二十六日(土)曇り 風強し | keiの歌日記

三月二十六日(土)曇り 風強し

  深夜の電話


受話器を取るなり

「おまえ、どうかしたのか?」

いきなりの怒鳴り声、旧友のひとりであった。

「何だよォ  いきなりィ」と、わたし。

「なんだか線香臭い歌ばかり作りゃがってェ

いよいよお陀仏か?」

 なんとまぁ情緒の無い奴・・と思いながらも

わたしは嬉しかった。

 その後は旧交を暖める他愛ないお喋りで終わったが・・

 あらためて最近の作品を見直して見た。

なるほど、当らずといえども遠からずか、と、

思わず苦笑い。

 あまり遠くない将来に、確かにそれがあること

を無意識に頭の隅に覚悟しているのかも知れない。

 友達とは、友情とはイイもんだと、つくづく思った。

ガサツな彼でも敏感になにかを感じ採ってくれる

、それほどわたしの歌は暗くなっていたのだ。

 精一杯明るく歌おう。

 ネクラな性格ではそうもいかないか。

 という訳で、相変わらずのクライ歌だと思います

が、付き合って下さい。


  

今日の歌


*溢れ来るものありゆえを知るひとの遠き面差し見す夕あかね

*若き日に語り合いたるその一語死よおごれ吾すでに孤りなり

*陽炎の燃ゆる路上に倒死せるわが影か棄てられしレモンは

*かなしみをあまた残してゆく人のために今宵は薔薇を刻みぬ

*その想いわれへ還らぬつめたさに白き頬あり遠き灯の下

*一滴のなみだもて措く訣別の譜へ終止符を かなしソネット

*くらぐらと雲よ無音の歩を速め隠せいざよう月を わが身を

*明日という切なきものを見詰めたく夜来 雨なる窓憎み居り

*パテテイクソナタ生れしも斯かる夜と思うピアノの鍵湿る雨

*禁欲を科すとも少女の髪嬲る風を鼻腔に受くは否まず

*かなしみを恃む驕りを杏仁の香漬くテキーラ呷りつつ羞ず

*わが恋うは腋窩・ひかがみ・例うれば汝が装いを忘れたる陰