三月四日(土) ナイル三月号掲載歌と題詠100blog提出歌 その三
ナイル三月号掲載作品 (甲村秀雄氏撰)
山茶花のひと (新かな)
*東京の夜は深閑と更けゆくも影なす摩天楼のうごめき
*「あの月が怖いの」ひとは呟きぬ杳き思いに眸泳がせつつ
(杳き=とおき) (眸=め)
*傍らに死を措き寝ぬる冬の夜の風は悲鳴のごと耳を刺す
*逢いたくはなきか木枯らし吹きす荒さぶ夜に呼び掛くる声出でぬまま
(荒ぶ=すさぶ)
*山茶花の白が好きとうひと在りて終日思うその香恋しき
*何処までもさみしき肌の香を追えどひとまた去りぬ夢のあなたへ
*かにかくに書には在れど愛恋の火中にひとを措くは悲しき
(書=ふみ) (火中=ほなか)
*ひと恋うるままに手折りし山茶花の白交じりたるその紅や佳き
*乙女さぶ姿に顕てりはるか日のひとの姿の眩しさに酔う
*街路樹の銀杏散り果てふいに空明るくなりて師走早まる
今日の歌 (題詠100blog提出歌)
011:からっぽ
*保育園帰りの幼児二、三してランチボックス振りつつ「からっぽ」
012:噛
*噛み合わせ上手くゆかぬと歯科医者は眉をひそめてそっと呟く
013:クリーム
*楚々として顔輝かせクリームの香を散らしつつ行くよ タレント
014:刻
*春風のややぬるくして夜は沈む逢魔が刻はまさにこのとき
015:秘密
*夢に見し乙女の裸像美(は)しかりきわが末代の秘密とやせむ