keiの歌日記 -5ページ目

今日の歌 杳きうたびとへ (柿本人麻呂朝臣を偲び) 二月十五日(水)

           今日の歌

 

              杳きうたびとへ (柿本人麻呂朝臣を偲び)

 

     *水底に死を横たへて在りし世のいまを知るがに睡蓮の咲く

        (水底=みなぞこ) 

 

     *古りし日に逝きしと伝ふいや果ての海へ響かふ波の遠鳴り

 

     *貝は峡谷 波は並みとぞ遠つ人詠み給ふここ遠流の島を

         〔峡谷=かひ)              (遠流=をんる)

 

     *溶明か溶暗か知らず冬の涯に陽は音も無く海底へ逝く

                               (海底=うなぞこ)

 

     *影を篭めふかく静もる時の間を春近づきぬ 夜といふ闇


今日の歌  惨!オリンピック      二月十四日(火)

今日の歌

 

           惨!オリンピック

 

      *さはやかに銀盤を蹴り鶴のごと脛を直ぐ立て舞ふをとめ愛し

                                   (愛し=ゑし) 

      *宙を飛ぶ鳥かはたひとイタリアの空何処までも蒼く澄みたり

 

      *完敗のつづくトリノの蒼ぞらにしをるるままに日章旗垂るる

 

      *メダルなど願ふも無理と伊太利の陽は冷やかにコートを照らす

 

      *寝不足のまなこに痛し銀盤のかがやきに伏す大和男の子よ

☆☆☆アンソロジー『洗濯船が夢を見る』☆☆☆の最終稿

合同歌集『洗濯船が夢を見る』の最終稿が届いた。発刊は少し遅れて四月十五日とのこと。

記録を後々の為に残して置くこととする。


      秋陽の映ゆ                 船坂圭之介

 

     絶望の壁しか見えぬ過しかたの無意味に哭きぬ やがて晩秋

 

     十月の風にかなしき唄を聴くや老いたる駑馬の耳ふいに立つ 

 

     秋の夜のそらの深処に捨てばやなうつし身のわが愛という星 

 

     夜は重く背に肩にあり鬱うつと言葉ひとつも無く無為に耐う

 

     黄昏の雨かなしみは去らずしてこの生の日になに意味やある

 

     残念のひとつとも見ゆ落日のなか熟るるまま腐ちるいちじく

 

     ただ一を得んために賭す何も無し 秋 天空は果てもなく蒼

 

     たましいの抜け殻のごと動かざる夜霧にくらしわがひとり影

 

     秋の水のどに昂ぶる霧の朝をはしれ悍馬のごとく「かなしみ」

    

     羽ばたかぬまま数尺を鳥は墜つかく簡明に望み得ず・・死は


     ゆたかなる頬しろくして落日のなかにわが偏愛の「影」あり

 

     乱舞するこころもすでに遠くして褐色の死を恋うごとく居る

  

     たそがれは秋ゆえくらし王冠のごとき腋窩によどむ 夕陽

                                〔夕陽=せきよう)

     薄荷酒の酸ゆく在りたりかの白き足裏揺れつつ居たり秋の夜

                       (足裏=あうら)

     つきしろのやや寒がてに秋のそら静寂よわがこころゆるすな

 

     秋を背に風のはやさへ堕天使の汝かかぐわしく髪ほつれさせ

 

     くぐまりて陽のしたを行く幾たびの秋に別離の足音聴きつつ

                               (足音=あおと)

     あおざめし肌 血脈のきずなとはいえどかわたれどきの眩暈

     さざ波の音さえ知らぬ偏執狂たりし過の日の薔薇戀うるなる

 

     影あわく寄らしめて樹は蒼空へ我執とは斯くゆるがざるもの 

 

     シリウスの映ゆる海面にかぜ絶えり茫と寂たる今日 九月盡

             (海面=うなも)

     夕陽に背炙られつつ戻り得ぬ道ひたはしる かなし 秋とは

      (夕陽=せきよう)

     逐情に似たるふるえを足うらにわらうべし 秋 雷鳴に酔う 

 

     苦おしきこころ思おゆ森の果てにかのイカロスは翼墜しめし

                                (翼=よく)

     盲いてもししむらは在りこころ在り背に煩悩の汗よかがやけ

 

     たくましき心は持たずビイドロの瓶に夕陽の朱けは映ゆとも

 

     わくら葉の掌に重し秋 迷いつつわが行く道の謀りごとめく

 

     されどわが日々はあらざり逝く秋の野に嵐こそふさう世紀や

 

     

思い出すことなど

 旧制中学四年(今で言う高校の一年)の、国語の宿題で短歌を作ってくるのが


あった。


 当時、啄木に耽溺していた私は

◎啄木の歌読みふけるこの頃は淋しくなりぬ啄木に似て

を提出した。国語の教師がいたく気に入ってくれ、地方の短歌結社へ半ば強引

に入会させられた。以来一年間、大人の達人に揉まれ、叩かれ、それでも作歌

の醍醐味を楽しんだ。

 やがて大学受験のため心ならずも作歌中断、さいわい医科大学に合格、旧制

のため予科が三年あり、同好の士が集い、短詩形同好会のような集まりを持っ

た。ところが短歌は古くさいと、強引に現代詩に一本化され詩作に励むこととな

った。

 予科の三年は詩作に一所懸命で楽しかった。本科へ入学するとさすがに暇が

無くなった。自然と詩のための世界からも遠ざかり、文系の雑事は一切捨てざ

るを得なかった。

 やがて卒業、修練を終え医師となり、やがて地方の病院への赴任が決まり各

所を転々、最終的に現在地に到り、そのうち、あるご縁から I 師のお誘いを受

け、H 結社へ入会。数年間かなり充実した星霜を送らせて頂いたが、意に反す

る私事の為に残念ながら筆を絶つ。

 その後、長年連れ添った妻に先立たれ、自身も腎を痛め人工透析生活に入る。

前途に”死”以外の何物も見出せぬ不穏の生活の中、たまたまネットのあちこち

を彷徨している内、ナイルを知りお仲間させて頂こうと思い立ち入会。主宰はじめ

編集委員の暖かい見守りの中、只今現在は充実した短歌生活を送っている。

ネットの中では、若い人たちが多く、少なからぬ刺激を受けながら、あちこちの

オンラインの歌会などに参加して悲喜こもごもの評価に一喜一憂しながら、これ

またひとつの生きがいと、日ごとややもすれば前途に悲観の目しか向けざるを


得ない灰色の透析生活を、少しでも楽しくと願っているこの頃である。


                               

    今日の歌    緋山茶花      二月十三日(月)

       今日の歌

 

               緋山茶花  

 

     *如月のはてに残れるひとひらをつひに落とせり緋なる山茶花

 

     *冷えし頬へ風のしみらに当る日は茶房「ひだまり」まこと恋しき

 

     *ものみながめくるめく春近けれど傍らに添ふ「ノラ」は野良猫

 

     *放たれて闇へゆく「君」さちあれと「ノラ」に呼び掛く春浅き夜に

 

     *ことごとく華やぎてをり春といふ語感にひたりあふる薔薇酒

                              (薔薇酒=しょうびしゅ)  

 今日の歌  十八の春               二月十二日(日)

今日の歌

 

           十八の恋

     *をさなき日胸の昂鳴りおさへつつひと待ち居たり古き駅舎に

  

      *たましひの凍る思ひにひと恋ひし十八の日のなつかしきかな

   

      *紫陽花はなほかほれるや遠やまに雪をのこして春はめぐるも

  

      *わか鮎のごときをとめ等ふるさとの河に嬌声かつて交はせし

 

      *如月のはてに残れるひとひらをつひに落とせり緋なる山茶花

 今日の歌  雑 詠 二月十一日(土)

         今日の歌

 

                雑  詠

              

 

     *我よりは言へず居りたりたたなづく雲間より照る陽の眩しさに

 

     *変節をそしらるるとも冬薔薇は言はず孤高のかたへに佇つも

 

     *あえかなる香は既にして消えてあり破倫の我や恋ふは孤独死

 

     *ふくらはぎややに腫れたるごとくしてひとは歩めり宵の銀座を

 

     *建国の日とふ休日 あさからのかぜしきりなり嘉すごとく


今日の歌  望郷     二月十日(金)

        今日の歌

 

            望 郷

 

     *とほがすむ鷹城山を夜々夢に見るも「酔生夢死」のをはりか

 

     *ふるさとは山野きびしく川清くただよふ雲の消えぬはずなく

 

     *苔蒸してなほ樹つ墓の呼ぶこゑにふと目覚めしを訝しみ居り

 

     *おのおのの田の面に人の散り在りて蛙のごとく苗を植う態様

                (面=も)    (蛙=かわず  (態様=さま)

 

     *ふるさとは近きにあらず杳として記憶の底ににぶくかがやく

 

今日の歌  むかしの恋       二月九日(木)

           今日の歌

 

              むかしの恋 

      

 

     *風聞の発つが怖しとそのひとは怯えたる眸に思慕を見せつつ

 

      *一途なるひとの想ひにたじろぎてただ置きて去る街の灯の下

 

      *ひと思ふこころ激しきしかすがに人づまなれば越えがたし河

 

      *なかぞらに為すな恋とぞ古き歌の聞こゆる中を泳ぎゆく 河

 

      *さなことの在りしむかしの迫る夜は胸重くなり醒むるまぼろし

今日の歌    亡き妻への挽歌          二月八日(水)

       今日の歌

 

               亡き妻への挽歌

 

     *死してなほ黙し居るらむそのことを咎むがごとく冬の陽は照る

 

     *髪ながく脚美わしきそのひとを妻と呼び来し過去のはかなさ

 

     *つひにして解かり得ざりしその闇をしみじみ思ふ冬の夜の涯

 

     *佳き母で在りしがなぜに佳き夫を演じ得ぬわが狭量を恥づ

                        〔夫=つま)

     *ひたすらに妻演じ居しひとなるにわが影揺らすままの訣別

随想        二月七日(火)第二部

    昨夜は一睡も出来なかった。就寝は午後十一時半にしたが、何故か脈の結滞が激しく、

   散々寝返り打ったり、數を数えたり・・でも脈の結滞が気になって眠りに入れない。

 

   寝るときはいつもNHKの「ラヂオ深夜便」をかけっ放しにして床に就くのだが、いつもは午前

   一時のニュースは全然問題なく聞いて眠りに入るのに、昨夜は一時はおろか、午前二時から

   の名曲の時間になっても頭は冴え返るばかり。そして、モーツアルト特集だったので、ついつ

   い聞きこんでしまった。午前三時からの昭和五十九年の、流行歌の時間も眠れず聞いてし

   まった。


    脈拍はその間、不規則に結滞を繰り返し眠りを妨げる。頭は冴え返るばかりで、当然面白く

   ないことを考えてしまう。


    昨日は朝からなにか変で、携帯が突然ロックしてしまい(なにもしないのに)、暗証番号入れ

   て開錠しようとしても受付ない。

    

 

    仕方がないからドコモへ飛んで行き、女の子に相談しても解決策がない、こんな事初めてだ

   とお手上げの態。やむを得ず新機種を購入。ところが入力の仕方が今までと全然違い、メール

   一本打てない有様。


    ついてない日はこんなものか。と、とつおいつ考えていてもやはり眠れない。明日は透析だし

   などとおもいつつ、夜が白みかけてきた午前五時のニュースは記憶にない。どうやらやっと

   眠れたようだ。


    そんなわけで、今日の透析は辛かった。日、月の二日空けだったから除水も2、500ccと最近

   にない多量だったせいもあるかも知れない。


    今夜は早く寝よう。